冬暖

《冬暖》歸亞蕾、田野、馬驥、孫越、孫伯堅 
李翰祥:監督 1969年 國聯


饅頭屋の老呉(田野)と、隣家の薬局の親戚・阿金(歸亞蕾)の恋物語。李翰祥の文芸作品の傑作と言われている。
老呉は、阿金に思いを寄せているが、貧しく愚直な老呉は、そのことが言い出せない。阿金は彰化に行ってしまって、なかなか戻ってこない。ある日阿金が大工に嫁いでしまったと知るが、何もするすべがない。商売もうまく行かず、阿金は結婚、兄も亡くなり、老呉は、饅頭売りから路上の麺売りになっていた。
夜、一人の客が麺を食べにやってきた。赤子を抱えた女性こそ、阿金その人だった。夫がなくなり乳飲み子をかかえ戻って来たのが、乳飲み子がいては働けないと、老呉に赤子を預かってくれと懇願する。最初は拒否する老呉だが、しかたなく預かることに。さらに阿金は言う「寒い夜にうどんを売るより朝早く揚げ餅を売る方がいい」。阿金の言葉に従って揚げ餅を売ると飛ぶように売れた。阿金は子供父親が老呉だと噂している人がいると言う・・・・。


まどろっこしいことこのうえない2人なのだが、そこがロマンティックだと言える。李翰祥は饅頭屋の老呉の心を、小さな動作にも意味を込めて丁寧に丁寧に描いてゆく。老呉は阿金が気になりそわそわしたり、阿金の何気ない一言に嬉しさを隠しきれなかったり、心のうちを言えずあきらめたり、やりきれない思いを抱えたりしながら、再び阿金に巡り会う。2人は少しずつ近づいてゆくが、老呉はなかなか心のうちを言い出せない。クライマックスになってもまだ言わない(笑)。ためてためて、本当の最後にようやく・・・。田野というのは、こういう男が本当にうまい。そして歸亞蕾が若い。
2007.6.3@香港電影資料館「李翰祥電影回顧」


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