天堂口(ブラッド・ブラザーズ〜天堂口〜)

《天堂口》呉彦祖ダニエル・ウー)、劉燁(リウ・イエ)、楊祐寧(トニー・ヤン)、張震チャン・チェン)、舒淇スー・チー)、李小、孫紅雷(スン・ホンレイ) 
陳奕利(アレクシー・タン):監督


租界時代の上海のクラブを舞台に、田舎から上海に出て来た兄弟(と義兄弟)たちが翻弄されていく様を描く。
野心を持って田舎から上海に出て来た大剛(劉燁)は、クラブ「天堂」のボーイになっていた。「天堂」のボス洪哥(孫紅雷)は、表向きは経営者、その裏では黒幇のボスでもあった。大剛は、自分を追って上海にやって来た弟の小虎(楊祐寧)とその幼なじみの阿峰(呉彦祖)の2人を雇ってくれるように洪哥に頼む。しかし洪哥が大剛らに依頼したのは、危ない仕事だった。大剛も小虎も阿峰も後戻りできないところに入りこんでいく。


ボス、ボスの命を狙う腹心、その愛人、野心あふれる若者、兄弟の情、義兄弟。役者は大陸、台湾、香港のいい男(好みは別にして)、セクシーな美女。フィットしたスーツにボルサリーノ、葉巻にライター、舞台はきらびやかな上海のクラブ。こんなにお膳立ては揃っているのに、ちっともどきどきしないし、ハラハラしないし、切なくならない。いったいぜんたいどうなっているのか。プロデューサーの呉宇森ジョン・ウー)もこれでは満足できないだろう。


見始めてすぐに気になったのがライティング。映写の状態が最善だとしたら、隅々まで光が回り過ぎではないか。夜のシーンで車のライトに浮かび上がる人々など、夕暮れかと思うほど明るい。これではすごみが感じられない。暗い中にも陰影がある画面が作れるはず。ボスの部屋ももう少し暗ければ、重厚感があるものを、せっかくのスタイリッシュが活かされていない。


そして問題はやはりストーリーの処理の仕方か。話しはけして複雑ではなく、結末に向かってただただ収斂していけばいいはずが、いろいろ詰め込んでメリハリがない。漫然と話しが進んでいくだけ。クライマックスも盛り上がれず、というか、どこがクライマックスなのかはっきりせず、カタルシスも得られない。主役3人の情も描ききれていない。
この映画は、阿峰(呉彦祖)が主役で、兄弟の情を傍観しつつ、ボスの女と出来てしまった男(張震、役名はマーク哥なのだ)に肩入れしていくのだが、彼の目線がどうもはっきりしない。そろそろ彦祖を見るのも飽きて来たかもしれない。いつも同じ表情だし。楊祐寧も魅力を発揮しているとは思えない。せっかくの兄弟の情を描くのに、その存在があまり機能していないのは解せない。劉[火華]の野心も中途半端。見終わって印象に残るのが張震っていうのもどうなのか。


旺角百老匯でハウス4という時点でいやな予感はしたが、見事的中。役者のセレクトはけして悪くはないのに、面白みのない映画になってしまっている・・・。言語は普通話
2007.8.24@百老匯電影中心


■□07年に見た映画一覧□■