不能没有你(あなたなしでは生きていけない)

戴立忍。陳迎彬、趙祐萱 
戴立忍(レオン・ダイ):監督


男が娘を抱いて「不公平だ」と叫びながら、台北のある橋から飛び降りようとしていた。
高雄。港に住み船の修理を生業としている男とその娘は、貧しくも穏やかに暮らしていた。男と妻は籍を入れておらず、妻は行方が分からなくなっている。娘は妻の姓を名乗っていた。娘が学校に上がる年齢になって初めて、自分が娘の正式な保護者になれず、娘を学校に通わせられないだけでなく、娘と一緒に住むことも出来ないと知った男は、友人の薦めで地元出身の議員を台北まで尋ねるが、結局は懸案をたらい回しにされる。男は娘と再び台北に向かって議員に訴えようとするのだが・・・・。


ラブストーリーのようなタイトルだが、親子の物語。あざといシーンも多いが、モノクロの画面がそのあざとさをいい具合にそぎ落としてくれ、変な感情を挟み込む余地を無くしていて非常にいい具合。戴立忍監督、上手い。特に最後がいい。そしてご本人、さすがかっこいい(間近で見て、ちょっと惚れた)。
(以下、監督とのQ&Aから、北京語だったので一部不確かなところもあり)この話しは事実に基づいている。事件(男が娘を抱えて橋から飛び降りようとしたこと)があったのは5年前のこと。監督の戴立忍は、この事件をテレビで見ていたという。そして2年前、脚本を見た戴立忍は、かつての事件の裏にはこういう物語があったということを知って、この映画を撮った。主人公の男は港で船の修理に関わっているが、実際には海に潜る仕事ではない。モノクロにしたのは、カラーで撮るよりもこの物語にはモノクロが相応しいと感じたから。カメラマンはコマーシャルフィルムを撮っている人。映画のプレミア時、上映後、実は映画の主人公の親子が見に来てくれていたことを知った。その時に初めて親子に対面したという。
2009.3.26@香港國際電影節(The Grand Cinema)


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