김씨 표류기(荒島男與俏宅女)(彼とわたしの漂流日記)

《彼とわたしの漂流日記》チョン・ジェヨン、チョン・リョウォン、パク・ヨンソ 
イ・ヘジュン:監督


失業し借金をかかえ彼女にも逃げられた男がハンガンの橋の上から投身自殺をはかる。ところが男はハンガンに浮かぶ無人のパム島に漂着してしまう。最初はなんとか島から出たいと思い観光船に向かって合図を送ったり、砂浜に「HELP」と書いてみたりするのだが、誰も助けに来てくれない。さらなる自殺も考えるのだが、ひとまずこの島で生きてみようと考える。寝床を確保、食物を確保しようとするのだが、なかなか上手くいかない。しかしだんだんと野生化してく男は、なんとか島の環境にもなれていき、いつしか砂浜の文字は「HELLO」になっていた。
そんな男を望遠鏡で見ていたのは、引きこもりの女性。家族とも顔を合わせず、カーテンを閉め切りゴミで埋まった部屋でネットをたよりに生きている。彼女が唯一、昼間に窓をあけ望遠レンズをつけたカメラで人のいない街を撮る日が1年で2日だけある。そんな日、カメラのレンズに飛び込んで来たのは、ハンガンの島に住む異星人だった。。。


なにやらシリアスな映画かと思っていたのだが、実はコメディだった。無人島といってもハンガンの中州、火を炊けばすぐに分かってしまうだろうから、設定からしてあり得ない話なのだが、これがけっこう笑えて面白く最後に少し考えさせられる。
引きこもり女は突然、出前を頼んでしまい、出前持ちにハンガンを渡らせ、男が食べたいと願っているジャージャー麺を島に届けてしまうのだが、男は出前持ちに麺を突っ返して、「麺」は希望なのだと言う。魚や肉を焼いて食するという原始的な食から、トウモロコシを植え収穫し実を粉にして初めて出来る麺という文化的な食を「希望」と呼んで、自らの力で麺を作っていく行為に生きる意味を見いだしていく。男は無人島で肉体的にも精神的にも成長し、傍観者の女も男のリアルな行為に刺激されて自らの殻を破り、生きる意味を見いだしていく。このあたりの作りが面白かった。
さらに訓練空襲は本当に年に2回行われているのですね。漢江の中州といい、この訓練空襲といい、ローカルなものが物語りの重要な要素となっているところも興味深い。
2010.8.15@夏日國際電影節(香港藝術中心)


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