綫人(線人)(密告者)

《線人》
張家輝(ニック・チョン)、謝霆鋒(ニコラス・ツェ)、桂綸鎂(グイ・ルンメイ)、廖啓智(リウ・カイチー)、苗圃、姜皓文(フィリップ・キョン)、陸毅(ルー・イー)、郭政鴻(デレク・クォック)、金剛、呉浩康(ディープ・ン) 
林超賢(ダンテ・ラム):監督


刑事の李滄東 (張家輝)は、情報提供者を使って事件解決を試み、すんでのところで犯人を取り逃がす。身分がばれた情報提供者は徹底的に痛めつけらていた。しかし若い刑事たちには「情報提供者とは友達のように接しろ。あくまでも友達の”ように”だ」と言い聞かせていた。
貴金属店強奪犯の巴閉(陸毅)が香港に戻ってくるという情報を得た李滄東は、出所の近い細鬼(謝霆鋒)に接触、情報提供者(線人)になるようもちかける。細鬼には借金があり唯一の身内である妹は借金のカタにとられたうえに客を取らされていた。そんな細鬼に成功報酬をちらつかせて線人へと誘いをかけた。
悩みつつも金のため情報提供者となることを承諾した細鬼は、滄東の命により手始めに不法レースで巴閉の手下の注目を集めることに成功、巴閉の一味への潜入した。巴閉の女・阿弟(桂綸鎂)らは銃を手に入れ、阿弟と細鬼は宝飾店を物色していると滄東に報告する。しかし警察の上司はこれらの情報では満足せず、強盗発生後に逮捕すると言い出す。滄東は細鬼を危険にさらすことに悩むのだが・・・。


《証人》に続いて林超賢、張家輝、謝霆鋒、廖啓智という組み合わせで見せる警匪片(警察と犯罪者の物語)。
今回は刑事が張家輝(ちなみに刑事の名前・李滄東は韓国の監督イ・チャンドンの漢字表記なのは何か意味あるのだろうか?)。過去に自分の情報提供者(線人)を危険にさらし廃人同様にした過去を持っていおり、情報提供者に感情移入してはならないと知りながらも、見捨てることはできない。さらに妻との過去も彼に暗い影を落としており、複雑な心理を持っている。張家輝は無表情を装いながら、徐々に感情を作り上げて、クライマックスへもっていく。その細かい感情表現は見事。情報提供者を演じるのは、このところ活躍めざましい謝霆鋒。憂いと同時に唯一の身内と自分と同類の者への熱い思いを胸に秘めた役を坊主頭で強面風に演じている。この謝霆鋒もまたクライマックスに向かって感情とアクションを盛り上げていく。そして一番の驚きは桂綸[金美]演じる若い情婦。ロッカー風ないでたちでたばこを離さず、自分の感情をもてあましているようななげやりな態度かと思えば、自分の感情に素直に従おうとして怖い者知らずな無軌道ぶりを演じる。これまでの桂綸[金美]とはまったく違ったスタイルで瞠目。さらに陸毅に悪役をやらせたことに感心する。


物語そのものは単純だが、その中に含まれる感情は複雑で豊富。前作よりずしっと重い感情が積み重なっている。クライマックスが少しスプラッター風ではあるものの、脚本の良さと的確な配役は《証人》以上かもしれない。
2010.8.26@旺角百老匯


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