《人》
張瑛、白燕、呉楚帆、張活游、紫羅蓮、李清、黄曼梨 
呉回:監督 1960年 モノクロ 粤語 無字幕
(オリジナルフィルムなし、テレビからの録画)


とある会社で女性事務員の面接があった。秘書の黄曼(黄曼梨)の面接は一風変わっており、何事にも驚かないかどうかを試され、さらには独身であること両親がいないことなど条件がついていたが、給料はすこぶるよかった。沢山の候補の中から、葉翠蘭(羅敏)、李華珍(白燕)、周采萍(紫羅蓮)の3人が面接に合格した。出社第一日目、秘書の黄曼は3人を連れ出し会社に相応しい服を買い与えるなど、これまた普通の会社とはどうも違っていた。この秘書はどうやら社長(李清)と不倫の関係にあるらしい。社長には妻(容小意)、息子・彼得(杜平)がいた。社長は女ぐせが悪いようで、息子も遊んでいるようす。さらに会社には、かつて周采萍と交流のあった材料研究主任・呉達明(呉楚帆)、雑用係の老胡(林坤山)らがいる。女性社員たちは特に忙しくもないのだが、時々黄曼から客へのプレゼントを飛行場や埠頭に届けて欲しいと言われる。
実は李華珍には夫・張自強(張瑛)と娘(馮寶寶)がいるのだが、独身と偽っていた。出社初日、夫は妻を訪ねてきて金をせびる。夫は画家だが、悪い友人にそそのかされ薬物依存となり絵を描くこともできなくなっていた。社長の息子・彼得は葉翠蘭に気があるらしく、さかんに彼女を誘っていた。葉翠蘭の叔母はデートの相手が社長の息子なら文句も言わず夜遅く帰ってくる彼女に甘かった。周采萍はかつて交際のあった呉達明と連絡が取れなくなった後、呉達明の旧友と交際し結婚の約束をしていたが、彼は留学先で知り合った女性と結婚してしまったことを知る。呉達明は密かに周采萍を思っている様子だが、思いを口にすることはなく、傷心の周采萍を見守っている。
雑用係の老胡には医者の勉強をしている1人息子・胡徳仁(張活游)がいる。息子には自分は会社の主任だと噓をついていた。息子が勉強を終え、戻ってきて会社を訪ねて来ることになり途方にくれるが、呉達明が機転をきかせて息子を1度はやりすごすが、2度目には嘘がばれてしまう。息子は無事に病院に勤めることになり、老胡は一安心する。


このような登場人物の設定がこまかく語られていき、徐々に物語りが核心へと進んでいく。画家の張自強は、何度も薬物と手を切ると誓うが苦しさに負け、しまいには娘を売り飛ばそうとするが、医者の胡徳仁のすすめで入院して立ち直る。葉翠蘭は社長の息子に弄ばれ、失意のどん底に突き落とされるが、社長が息子の嫁に迎えるとうまいことを言う。そして女性社員3人にはそれぞれに客への届けものが言い渡されるのだが、前々からプレゼントの中身を不審に思っていた呉達明が包みを開くと中からは白い粉(薬物)が現れた・・・・。


120分近くあり、まるで連続ドラマでも見ているかのようだ。時々物語がどこへ帰結していいくのか心配になるほど人物背景が細かく語られる。物語は推理劇的・犯罪劇に進んでいきながら、地道に生きて行くことがなにより大切だと説いていく。張瑛の汚れ役、黄曼梨の秘書、李清の悪役(&好色)など、見所も満載。
2011.5.15@香港電影資料館「人人為我、我為人人:中聯電影」


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