奪命金

《奪命金》
劉青雲ラウ・チンワン)、任賢齊リッチー・レン)、何韻詩(デニス・ホー)、胡杏兒(マイオリー・ウー)、廬海鵬(ロウ・ホイパン)、車婉婉(ステファニー・チェ)、尹子維(テレンス・イン)、賈曉晨(JJ) 
杜琪峰(ジョニー・トー):監督


私生活では面倒な事は後回しにし何事もすぐには決められない警察の警部・張正方(任賢齊)とマンションを買いたい妻(胡杏兒)、人がよすぎて成績が芳しくない銀行の投資顧問テレサ(何韻詩)と大金を預けている客(廬海鵬)、義理堅いが少々おつむの弱そうなヤクザ三腳豹(劉青雲)と裏金で投資をしているヤクザ凸眼龍(姜皓文)の一見関係のない3の物語が、株の暴落でたぐり寄せられていく。


これから見る人のために、物語は書かないでおく。(ただしまっさらで見たい人は以下読まないこと)
相変わらずの杜[王其]峰節でお金に翻弄される人々を描いており、愚行は繰り替えされるのだといいたげ。杜[王其]峰節といっても、今回すこし趣きが違って見えるのは、執行導演がいるためかもしれない(どの程度かかわったのかは不明)。さらに今回、トー組とは思っていなかった意外な出演者が次々と出てくるのも、いつもの杜[王其]峰映画とは少し違うところ。これは香港映画ファンは嬉しい誤算(誰がでているのか詳しくは内緒にしておこう)。
株の話といえば、近いところでは《竊聽風雲2》なわけだが、《竊聽風雲2》と《奪命金》では劉青雲の役柄は正反対といっていい。方や頭脳明晰なトレーダーで方や愚直なヤクザ。2つを比べてみると劉青雲の芸域の広さが分かるというものだ。
任賢齊は警部といったところか。仕事熱心だが、ことプライベートに関しては決断力がない。妻はマンションを買って貸そうと思っているが、夫は全然のりきじゃない。倒れた父の残した年の離れた妹の身の置き所を考えるのもためらいがちで、ついには妻に押し切られる。何韻詩は鬱屈している銀行員を思いの外よく演じている。特にこらえてこらえて、ちょっとキレるあたりがとても上手い。廬海鵬は、すだれ頭でいうことなしのぴったりの役。そしてこのところ林超賢(ダンテ・ラム)映画で常連の姜皓文が、ここでもいい味出している(実はけっこうファン)。何韻詩の上司を演じる車婉婉の登場もちょっとびっくりだが、なかなかいい人選。その他、先にも書いた、思わぬ出演者のみなさんもいい。
2011.10.14@新寶戲院(優先場)


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